テラドローンとは?会社概要とウクライナ防衛事業を解説

テラドローンとは?会社概要とウクライナ防衛事業を解説

テラドローンは、ドローンを軸に測量・点検・農業・防衛など幅広い事業を手がける、2016年設立のスタートアップです。ドローン関連のニュースを追っていると、「テラドローン」という社名を目にする機会が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。2024年11月には東京証券取引所グロース市場に上場し、2026年に入ってからはウクライナの迎撃ドローン企業の買収や、防衛装備庁のプログラムへの採択が相次いで報じられています。

2026年7月9日には、BSフジの報道番組「プライムニュース」に同社代表の徳重徹氏が出演し、ウクライナでの実戦知見と、それを日本にどう生かすべきかを語りました。本記事では、テラドローンという企業の基本情報を整理したうえで、番組で語られたウクライナでの取り組みと日本の防衛への示唆を、業務・製品検討の参考情報としてまとめます。
(参照:BSフジ「プライムニュース」2026年7月9日放送分 | YouTube)

企業概要

会社名 Terra Drone株式会社
本社所在地 東京都渋谷区南平台町2番17号 A-PLACE渋谷南平台4階
設立 2016年2月
代表者 徳重 徹(代表取締役社長)
上場 東京証券取引所グロース市場(証券コード:278A、2024年11月上場)
従業員数 624名(海外連結含む、2025年1月末時点)
対応地域 国内は東京(本社)・札幌・大阪・福岡に拠点、海外はベルギー・インドネシア・オランダ・サウジアラビア・マレーシアなど14か国以上で事業展開
公式サイト 公式サイトを見る

テラドローンとはどんな企業か

テラドローンは、2016年2月設立の"ドローンソリューションプロバイダー"です。測量・災害復旧、点検、農業、UTM(Unmanned Traffic Management:無人航空機の飛行を安全に管理する運航管理システム)、そして防衛関連事業まで、幅広い領域でドローンを軸にしたサービスを展開しており、これまでのサービス展開国は14か国以上、累計案件数は3,500件を超えるとしています。

主な事業領域

事業領域概要
測量・災害復旧ドローンによる空撮・測量データを活用した現況把握や災害後の復旧支援
点検橋梁・プラント・インフラ設備などの点検業務の効率化
農業農薬散布・生育状況の把握などスマート農業向けソリューション
運航管理(UTM)複数機のドローンが安全に飛行するための運航管理システムの開発・提供
防衛迎撃ドローン・偵察ドローンなど防衛用途のドローン開発
海外事業アジア・欧州・中東を中心とした現地法人・提携先を通じた事業展開

(参照:会社概要 | Terra Drone株式会社公式サイト)

テラドローンは2024年11月に東証グロース市場へ上場しているほか、2023年1月には、サウジアラビアのSaudi Aramco Entrepreneurship Venturesから約18.5億円を調達しています。エネルギー・インフラ分野に強みを持つ投資家からの資金調達は、同社の海外展開、特に中東地域での事業拡大を後押しする狙いがあったとみられます。

なぜ今、テラドローンのウクライナ事業に注目が集まるのか

ロシアによる侵攻が続くウクライナでは、比較的安価な無人機を大量に投入する戦い方が定着し、既存の高額な迎撃ミサイルだけでは対応しきれない現実が浮き彫りになっています。こうした戦場から得られた知見は、「コンバットプルーブン」(combat proven・実戦で有効性が検証された技術)と呼ばれ、世界の防衛関連企業がこぞって注目する対象になっています。

テラドローン公式サイトのニュースリリースによれば、同社は2026年6月にウクライナの迎撃ドローン企業2社を子会社化したと発表しています。近距離即応型ドローンを手がけるアメイジング・ドローンズ社、固定翼型の迎撃ドローンを手がけるウィニーラボ社がそれで、あわせて固定翼型UAV(無人航空機)メーカーのベソマー社との合弁会社設立準備も進めているとのことです。(参照:ニュース | Terra Drone株式会社公式サイト)

前述の「プライムニュース」内で徳重社長が語ったところによると、ウクライナには小規模な事業者を含めて約1,000社のドローン関連企業が存在する一方、当時、迎撃ドローンを専門に手がける企業は10〜15社程度にとどまっていたといいます。そのうえで、2025年9月頃から現地企業約200社以上と接触し、単なる技術力だけでなく、事業の方向性(ビジョン)が自社と一致するかどうかを重視して買収先を選定し、上記2社が選ばれました。

ウクライナでの迎撃ドローン事業と実戦知見

2種類の迎撃ドローンとその役割

徳重氏は番組内で、テラドローンがウクライナで2種類の迎撃ドローンを実戦投入していると語りました。

タイプ特徴主な役割
高速ロケット型速度を重視した設計ロシア製とされるシャヘド型ドローンを追跡・撃墜する
長時間飛行型(固定翼)長時間の滞空が可能偵察と迎撃を兼ね、レーダーによる監視が届きにくい空白域を補う

低価格・実用性を最優先する設計思想

番組内で徳重氏が特に強調していたのが、価格に対する考え方です。迎撃ドローン1機あたりの価格は約3,000ドル(日本円で約45万円)に抑えられています。高価で完成度の高い兵器を少数投入するのではなく、実際に敵機を撃墜でき、かつ大量消費に耐えられる価格帯であることを優先する発想です。

低価格・実用性を重視する設計の工夫
  • 1機あたり約3,000ドル(約45万円)という価格帯を維持
  • 機体の一部を3Dプリンター(設計データから樹脂・金属部品を積層造形する技術)で製造し、仕様変更を迅速化
  • 新しいセンサーやAI機器を搭載する際も、金型を使う量産方式より数週間〜数か月単位の短いサイクルで設計変更が可能

(参照:BSフジ「プライムニュース」2026年7月9日放送より)

AI自律化に向けた開発の方向性

徳重氏によると、現状の迎撃ドローンは人による操縦が中心です。機体の速度は時速約300kmに達し、熟練した操縦者であれば7〜8割程度の確率で目標を撃墜できる一方、経験の浅い操縦者では成功率が1〜2割にとどまります。操縦者ごとの技量差を縮め、多数の無人機が同時に襲来する「飽和攻撃」に対応するため、AIによる自律飛行や、1人のオペレーターが複数機を同時に運用する仕組みの開発を進めています。

同氏は自らも繰り返しウクライナを訪問し、現地の運用状況を確認しています。敵側もジャミング(妨害電波による通信・GPS妨害)や機体の高速化を進めているため、実戦で見えた課題を吸い上げ、週・月単位で改良を重ねるサイクルが欠かせません。

日本の防衛への示唆:「島国だから安全」という認識への警鐘

徳重社長はさらに番組の中で、射程約2,000kmのドローンであれば、日本周辺の海域から発射しても東京・大阪・仙台・札幌といった主要都市が攻撃圏内に入り得ると指摘しました。そのうえで、「島国だから安全」という従来の認識では、長距離かつ低価格なドローンによる大量攻撃には対応できないと警鐘を鳴らしています。

テラドローンは、防衛装備庁が実施する迎撃ドローン早期取得プログラムの実証試験を受託する企業に選定されています。防衛装備庁は2026年7月15日、海上自衛隊が同年6月30日から7月6日にかけて実施した公募の結果を受け、迎撃ドローン4区分(タイプ1〜4)すべてについて実証試験を受託する企業を決定したと発表しました。このうちタイプ3として選定されたのが、テラドローンが製造する「TerraB1」です。実証試験は2026年8月上旬に終了する予定で、その後の量産調達への移行については実証試験の結果を踏まえて判断するとされています。(参照:迎撃ドローン早期取得プログラムの実証機種の決定について | 防衛装備庁)

国内での量産・国産化に向けた課題

一方、ウクライナでの実戦知見をそのまま日本に持ち込めばよい、という単純な話ではない点にも注意が必要です。徳重氏は、日本国内で量産・国産化を進めるうえでの課題を下記のように挙げています。

課題内容
部品を含めた完全な国産化電池・モーター・制御装置など、一つでも部品が不足すれば生産が止まるため、日本企業と連携したサプライチェーンの国内構築が必要
政府による発注量のコミットメント部品メーカーが設備投資を判断するための需要見通しとして、発注量の見通しを示すことが不可欠
入札制度の見直し仕様策定から契約まで数か月〜1年かかる従来型の入札制度では、毎月のように進化するドローン技術に追いつけないため、国主導の特別プロジェクトが求められる
平時からの量産ライン整備年間1万台規模の量産ラインを平時から準備しておく必要があり、有事に部品もラインもない状態から始めるのは非現実的
気候・海洋環境への適応高温多湿・強風・海上運用など日本特有の環境への対応が必要。中東での試験では、ウクライナ製の迎撃ドローンが気温・湿度・砂漠環境で本来の性能を発揮できなかった例があるという
電波法・訓練環境の制約ウクライナでは約20km飛行させる機体でも、日本の電波関連ルールでは通信距離が約1kmに制限される可能性がある
AIS Insight

徳重社長は番組上で、海外の機体を輸入して終わりにするのではなく、国内で継続的に改良を重ねられる技術者・部品企業・試験環境を整備することの重要性を強調していました。「輸入して終わりにせず、国内で改良し続ける体制づくり」という発想は、ドローンに限らず自社のサプライチェーン戦略を考えるうえでも参考になる視点かもしれません。

まとめ:テラドローンの取り組みが示すもの

テラドローンは、測量・点検・農業・UTMといった民生分野のドローンサービスに加え、ウクライナ企業の買収を通じて迎撃ドローン事業に本格参入した企業です。徳重氏の語った内容を整理すると、同社の主張は「ウクライナで実戦検証された低価格な迎撃ドローンを土台にしつつ、日本国内で部品生産・量産・改良までを完結できる体制を、平時のうちに政府主導で構築すべきだ」という一点に集約されます。

防衛装備庁の早期取得プログラムへの採択は、その第一歩と位置づけられそうです。ドローンやGISに関わるビジネスに携わる読者にとっても、実戦知見を素早く製品改良に反映するサイクルの速さや、低価格・実用性を優先する設計思想は、防衛分野に限らず参考になる部分が多いのではないでしょうか。テラドローンの今後の動向は、国内のドローン関連業界全体にとっても注目に値するテーマといえます。

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