グリーンレーザー測量とは|仕組みと河川・海岸での活用事例

グリーンレーザー測量とは|仕組みと河川・海岸での活用事例

近年、豪雨災害の激甚化やインフラの老朽化を背景に、河川や海岸の地形をより速く、より正確に把握したいというニーズが高まっています。この文脈で耳にする機会が増えているのが、「グリーンレーザー測量」という言葉です。

ドローンや航空機にレーザーを搭載して地形を測る技術自体は、すでに広く普及しています。ではなぜ、あえて緑色(グリーン)のレーザーが必要なのでしょうか。従来のレーザー測量や、船で行う音響測深(ソナー)とは何が違うのでしょうか。

本記事では、グリーンレーザー測量の基本的な仕組みと、従来手法との違いを整理します。そのうえで、河川・海岸のインフラ管理における活用事例と、導入を検討する際に押さえておきたいポイントを解説します。

この記事のポイント
  • 水を透過する緑色波長のレーザーで、陸上と水中の地形を一体的に計測
  • 船が入れない浅瀬や河川でも、遠隔から地形を面的に測量できる
  • 水の透明度に精度が左右されるため、適用できる水域には制約がある

グリーンレーザー測量とは

グリーンレーザー測量とは、波長およそ532ナノメートルの緑色光レーザーを使い、地形を面的に計測する測量手法です。空間情報企業のパスコ(PASCO)は、自社の「ドローン搭載型グリーンレーザースキャナ」について、水を透過するグリーンレーザーをドローンに搭載することで、浅瀬の水底まで計測できると説明しています。(参照:ドローン搭載型グリーンレーザースキャナ | パスコ)

一般的なレーザー測量で使われる近赤外線のレーザーは、水面でほとんど反射・吸収されてしまいます。そのため水中の地形は計測できません。これに対し緑色の波長は水を透過しやすい性質を持ちます。陸上の地形だけでなく、川底や海底の起伏まで、レーザー1台で連続的にとらえられる点が最大の特徴です。

海上保安庁も、航空機に搭載したレーザー測深機の仕組みを解説しています。海底に向けてレーザー光を発射し、その反射光をとらえることで水深を計測するという原理です。通常の測量船が座礁の危険から近づけない、極めて浅い海域を効率よく測量するために活用しているといいます。(参照:水路測量の方法 | 海上保安庁海洋情報部)

こうした航空機からのレーザー測深は、「ALB(Airborne Lidar Bathymetry)」とも呼ばれます。グリーンレーザーは、このALBの中核を担う光源です。海上保安庁が解説する仕組みと、パスコが提供するドローン搭載型の仕組みは、いずれも水を透過するレーザー光で水深を測るという同じ原理に基づいています。

従来の測量方法との違い

近赤外線レーザーとの違い:水陸両用かどうか

一般的な航空レーザー測量(LiDAR)で使われる近赤外線レーザーは、陸上の地形計測を得意とします。ただし前述の通り、水面でレーザー光がほとんど反射・吸収されるため、水中は測れません。グリーンレーザーは、この弱点を補い、陸域と水域を1回の計測でつなげられる点に価値があります。

音響測深(ソナー)との違い:船が入れなくても測れるか

海上保安庁は、レーザー測深の利点として「水深が浅くなってもほとんど測深幅が減少しない」ことを挙げています。一方で「レーザー光は超音波よりも水中で大きく減衰する」という制約も説明しています。この結果、レーザー測深が使えるのは、水深が浅く透明度の良い沿岸域に限られるとのことです。

つまりグリーンレーザー測量は、濁った水域や深い水域を得意とする音響測深と比べ、浅く透明度の高い水域を、船を近づけずに面的に測れる点に強みがあります。逆に、濁りの強い河川や水深のある海域では、十分な精度が得られない場合がある点も押さえておく必要があるでしょう。

手法 測定対象 主な適用条件・制約
音響測深(ソナー) 水中の地形 船舶での航走が前提。浅瀬や船が入れない場所は不可
近赤外線レーザー(一般的なLiDAR) 陸上の地形 水面で反射・吸収されるため水中は計測不可
グリーンレーザー 陸上と水中の地形を一体計測 透明度の良い浅い水域に適用が限られる

活用が広がる分野:河川・海岸のインフラ管理

パスコは、グリーンレーザー測量の活用例として、河川分野と海岸・港湾分野を紹介しています。河川では、堤防から河川敷、河道までを一度にレーザーで測量し、3次元モデルを作成、海岸・港湾では、離岸堤など構造物の水中部の形状まで精細に再現できるとしています。さらに同社はドローンに搭載して低空から計測を行なっています。これにより、航空機搭載のALBよりも高密度な点群データを取得でき、従来は陸域と水域を別々に測量していた業務を、一度の計測で完結できる効率化も期待できます。

国土交通省が定める河川砂防技術基準にも「測量・計測」を扱う章が置かれており、河川管理における地形測量は公的な技術基準の枠組みの中で実施されています。(参照:河川砂防技術基準 調査編 | 国土交通省)

導入検討時に確認しておきたいポイント
  • 対象水域の透明度は十分か(濁りが強いと精度が下がる)
  • ドローン搭載型か航空機搭載型か、測量範囲に見合った機材を選べているか
  • 取得した陸域・水域の点群データを統合処理できる体制があるか
AIS Insight

AISでは、ドローンとGISという2つの技術領域を横断的に取材していますが、グリーンレーザー測量はまさにこの2つが交わる典型例だと捉えています。「空を飛ぶセンサー」で得たデータを「地図上で重ね合わせる仕組み」に載せて初めて、河川管理や防災の現場で使える情報になるという点は、本メディアがGISの活用事例で繰り返し取り上げてきた構図と重なります。

導入にあたっての注意点・課題

グリーンレーザー測量には、水域の透明度に精度が左右されるという制約があります。加えて、機材の導入・運用コストや、取得した大量の点群データを処理できる技術者の確保も課題になりがちです。ドローンを用いる場合は、河川区域や港湾区域での飛行許可、周辺住民や船舶への安全配慮も欠かせません。ドローンの飛行に関する規制区分は「レベル」や「カテゴリー」といった国土交通省の制度で細かく定められているため、機体・体制を検討する際にはあわせて確認しておくと良いでしょう。

飛行レベルとカテゴリーの違いは?ドローン飛行に関する2つの分類を解説

まとめ|グリーンレーザー測量の今後

グリーンレーザー測量は、水を透過する緑色波長の特性を生かし、陸上と水中の地形を一度に測れる技術です。船が入れない浅瀬や、広範囲の河川・海岸を効率よく把握できる一方、水の透明度によって精度が左右されるという制約もあわせ持っています。

防災・インフラ管理を担う立場からすると、豪雨のたびに変化する河道の地形や、老朽化が進む海岸構造物の状態を、迅速かつ面的に把握できる手段として注目に値します。自社が管理する河川・海岸施設の点検業務で、陸域と水域のデータを別々に扱っている場合は、こうした技術で一体的に把握できないか検討してみる価値があるでしょう。

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