「楽天」と聞くとEC(電子商取引)やモバイル通信を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実はドローン事業も手がけていることをご存じでしょうか。楽天グループの完全子会社である楽天ドローン株式会社は、建物の外壁調査からパイロット育成、無人配送まで幅広いサービスを展開しています。2025年8月には自社の楽天モバイル基地局点検にドローンを活用した事例を公表したほか、東京・晴海エリアでの無人配送の取り組みも進めるなど、グループ内外での活用事例も着実に増えてきました。
本記事では、楽天ドローンという企業の概要を簡単に整理したうえで、同社が提供する6つのサービスの中身と、実際の導入事例を中心に解説します。ドローンの業務活用を検討している企業・自治体の担当者にとって、サービス選定の参考情報になれば幸いです。
- 楽天グループ100%出資、2016年設立のドローン専門子会社
- 外壁調査・スクール・空撮・マッチング・機体販売・無人配送の6サービスを展開
- 楽天モバイル基地局点検やパレットくもじ、秩父市の配送実証など事例が拡大中
楽天ドローンとはどのような企業か
楽天ドローン株式会社は2016年9月28日設立、東京都世田谷区に本社を置く、楽天グループ株式会社が100%出資する完全子会社です。事業内容は大きく「ドローンによる外壁調査・空撮等」と「ドローンスクールの運営」の2本柱で、スクール事業は国土交通省登録講習機関(事務所コード:T0043001)として運営されています。公益社団法人ロングライフビル推進協会、一般社団法人日本建築ドローン協会、日本無人機運行管理コンソーシアムといった業界団体にも参加しており、建物管理・無人航空機の運航管理の両分野で業界との連携を進めていることがうかがえます。
同社は「ドローンで社会をエンパワーメント」をミッションに掲げ、点検・教育・マッチングといった各サービスを連携させる「ドローンエコシステム」の構築を打ち出しています。単発の業務受託にとどまらず、パイロットの育成から仕事のマッチング、機体販売までを自社グループ内で循環させる点が、事業構造上の特徴といえるでしょう。(参照:楽天ドローン株式会社 公式サイト)
企業概要
| 会社名 | 楽天ドローン株式会社 |
|---|---|
| 本社所在地 | 東京都世田谷区玉川一丁目14番1号 楽天クリムゾンハウス |
| 設立 | 2016年9月28日 |
| 代表者 | 牛嶋 裕之(代表取締役社長) |
| 資本構成 | 楽天グループ株式会社が100%出資する完全子会社 |
| 事業内容 | ドローンによる外壁調査・空撮等、ドローンスクール運営(国土交通省登録講習機関) |
| 公式サイト | 公式サイトを見る |
楽天ドローンが提供する6つのサービス
楽天ドローンのサービスは、大きく6つの領域に分かれています。まずは全体像を一覧で確認しましょう。
| サービス | 概要 |
|---|---|
| 外壁調査・点検 | ドローンによる建物外壁・屋根の調査、建築基準法12条点検にも対応 |
| ドローンスクール | 国家資格(二等・一等無人航空機操縦士)取得コースを運営 |
| 空撮 | 映像・写真制作のためのドローン空撮サービス |
| マッチングプラットフォーム | 全国のパイロットと依頼企業をつなぐ「楽天ドローンゲートウェイ」 |
| 機体・製品販売 | DJI社製品を中心とした機体・関連製品の販売 |
| 無人配送ソリューション | ロボット配送・ドローン配送による商品の無人配送 |
(参照:サービス一覧 | 楽天ドローン株式会社)
主力サービスの中身を見る
6つのサービスのうち、特に事業の中核を担う4つのサービスについて、内容を詳しく見ていきます。
外壁調査・点検|建築基準法12条点検にも対応
建物の外壁調査は、足場の設置やロープアクセスといった高所作業を伴うのが従来のやり方でした。楽天ドローンは高解像度カメラと赤外線カメラを搭載したドローンを使い、こうした高所作業を行わずに外壁や屋根の劣化箇所を調査します。人が直接近づかないため転落・落下のリスクを避けられるうえ、足場設置が不要な分、コストと調査時間の短縮にもつながる点が特徴です。
ドローンスクール|国家資格を最短1日で取得
楽天ドローンは国土交通省登録講習機関として、無人航空機を飛行させるために必要な技能(知識及び能力)を有することを証明する資格制度である国家資格に対応した講習コースを提供しています。経験者向けの二等無人航空機操縦士コースは1日間(学科4時間・実技2時間、128,000円〜)、一等無人航空機操縦士コースは2日間(学科9時間・実技10時間、288,000円〜)で受講可能です。空撮コース(132,000円、1日間)も用意されています。拠点は東京・江戸川区の1校のみですが、都内最大級とされる屋内飛行場を備えており、累計卒業生数は2,669名、修了審査一発合格率は97.1%、卒業生満足度は96%とのことです。
ドローンゲートウェイ|全国573名のパイロットをマッチング
楽天ドローンゲートウェイは、空撮などの業務を依頼したい企業に、全国から最適なパイロットを紹介するマッチングプラットフォームです。2025年11月末時点で全国573名のパイロットが登録されており、北海道から沖縄まで対応できる体制になっています。
無人配送ソリューション|ロボットとドローンの2方式
無人配送ソリューションは、地上を走行する「ロボット配送」と、空を飛ぶ「ドローン配送」の2方式を組み合わせたサービスです。ロボット配送は自動走行ロボットが地域の店舗から指定場所まで商品を届ける仕組みで、人や物を自動で回避しながら走行します。ドローン配送は、過疎地域や離島など地上インフラの整備が難しい地域を念頭に置いたサービスです。買い物が困難な地域での日常的な配送に加え、災害時の緊急物資輸送、屋外イベント会場への配送といった活用シーンも想定されています。
ドローンによる配送は、飛行させる場所や運航形態によって国の制度上の区分が異なります。この分類について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
導入事例に見る活用の広がり
楽天ドローンのサービスは、楽天グループ内のインフラ点検から、外部企業・自治体との実証事業まで幅広く活用されています。代表的な事例を見てみましょう。
楽天モバイル基地局点検(2025年8月公表)
楽天モバイルは2020年のサービス開始から5年が経過し、電波法に基づく5年以内の定期検査の対象局数が増加する見込みとなっています。従来、基地局の点検は人が高所に登って行う作業であり、季節による身体的負担も大きい業務でした。楽天ドローンはDJI製の高解像度カメラ搭載ドローンを用い、基地局建設前の見通し調査、工事完成後の竣工検査、定期点検業務にドローンを活用しています。人が基地局に登る必要がなくなったことで、熱中症や寒冷障害といった季節的リスクの軽減と、低コストでの効率的な検査を両立させました。今後は楽天ドローンゲートウェイを活用し、各地域のパイロットへ依頼することで全国展開を進める計画とのことです。
パレットくもじ(沖縄県那覇市)の外壁調査
楽天グループと久茂地都市開発株式会社は2023年6月、沖縄県那覇市の商業施設「パレットくもじ」で外壁調査を実施しました。高解像度カメラと赤外線カメラを用いて建物の外観・屋根・壁面を撮影し、可視画像と赤外線画像の両方から損傷・劣化箇所を解析しています。この調査は同施設での2回目の実施であり、継続的な建物状態の確認・維持管理にドローン調査が活用されている例です。
秩父市でのドローン配送実証(2022年11月)
埼玉県秩父市では2022年11月7日から17日にかけて、最大積載量7kgのドローンを使い、道の駅大滝温泉から二瀬ダム管理所前までの山間地域を含む片道約3kmの区間で、弁当や飲料などの物資を配送する実証が行われました。この実証の特徴は運用体制にあり、オペレーターが遠隔地からドローンの監視・操作を行う一方、機体点検などの現地拠点業務の一部は秩父市内の事業者が担当する分散型の体制がとられています。
- 楽天モバイル基地局点検(自社インフラの定期検査・竣工検査への活用)
- パレットくもじの外壁調査(商業施設の継続的な建物状態確認)
- 秩父市の配送実証(遠隔監視操作と地元事業者の分業による過疎地配送)
サービス選定を検討する際のポイント
ここまで見てきたように、楽天ドローンのサービスは対象読者によって関わり方が異なります。マンション管理組合やビルオーナーであれば、建築基準法12条点検への対応や、足場設置費用の削減という観点で外壁調査サービスが選択肢になるでしょう。ドローンパイロットとしての就業・独立を考えている方であれば、国家資格取得コースとゲートウェイへの登録を組み合わせることで、資格取得から案件獲得までを一つの窓口で進められる点がメリットになります。過疎地域や高齢化が進む地域を抱える自治体・小売事業者にとっては、秩父市の実証のように、無人配送を物流課題の解決策として検討する余地がありそうです。
楽天モバイルの基地局点検事例は、グループ内の設備管理という一見地味な業務にドローンを活用している点が興味深いところです。華やかな新規事業だけでなく、既存インフラの点検業務にドローンを組み込むことで、点検コストと安全性の両方を改善できるという発想は、通信・電力・鉄道など定期検査を義務付けられている他業種にとっても参考になるのではないでしょうか。
まとめ
楽天ドローンは、楽天グループの完全子会社として、外壁調査・スクール運営・空撮・マッチング・機体販売・無人配送という6つのサービスを軸に、ドローンエコシステムの構築を進めている企業です。楽天モバイル基地局点検、パレットくもじの外壁調査、秩父市の配送実証といった事例からは、グループ内のインフラ管理から外部企業・自治体との連携まで、活用範囲が着実に広がっている様子がうかがえます。建物点検や物流課題を抱える企業・自治体にとって、こうした事例は自社での導入を検討する際の参考材料になるはずです。