北京の"ドローン所持禁止"から読み解く中国国内のドローン規制動向

北京の"ドローン所持禁止"から読み解く中国国内のドローン規制動向

2026年9月、中国メディアの報道により、北京市が11月からドローンの所持そのものを禁止する方針を固めたことが明らかになりました。すでに販売や持ち込みが禁止されている北京市で、なぜここまで規制が強化されるのでしょうか。

本記事では、北京市の最新の規制強化を起点に、中国国内で進むドローン規制の全体像を、全国レベルの制度とあわせて整理します。

この記事のポイント
  • 北京市は2026年11月15日から、ドローン本体・主要部品の所持や保管そのものを禁止する
  • 全国レベルでも2024年以降、飛行管理条例や実名登録の義務化など、段階的な規制強化が進んでいる
  • 安全保障・治安維持と経済との間で苦慮する中国

中国・北京で"ドローン所持禁止"へ

11月15日から所持・保管も禁止に

NHKなどの報道によると、中国・北京市は2026年11月15日から、ドローンとその主要部品の所持や保管そのものを禁止する方向で、無人航空機の管理規定を改正する方針です。北京市政府は今回の改正について「首都の安全防衛線を強化し、市民の危険を排除するため」と説明しています。(参照:北京市、11月15日からドローン保有・保管を禁止 | 中国リスク情報)

この規制の背景には、2026年6月26日に北京市中心部の超高層ビル「CITICタワー」に有人小型機が衝突し、操縦士1人が死亡、地上にいた13人が負傷した事故があるとも報じられていますが、北京市は同事故を規制強化の理由としては挙げていません。

段階的に強化されてきた北京市の規制

今回の所持禁止は、突然決まったものではありません。北京市ではすでに2026年5月1日から、市内全域をドローンの飛行管制区域とし、新規販売や市内への持ち込み、電子商取引プラットフォームによる配送を全面的に禁止する規定が施行されていました。この時点では、実名登録を済ませた既存の所有者に限り、機体の保有や市外との持ち込み・持ち出しが認められていました。

時期規制内容
2026年5月1日新規販売・貸与・市内への持ち込みを禁止。既存所有者は実名登録により保有継続可能
2026年6月26日北京中心部の超高層ビルに小型機が衝突する事故が発生
2026年11月15日(予定)既存所有者を含め、ドローン・主要部品の所持や保管自体を禁止

5月の規定では、違反した場合は個人で最高5,000元(約12万円)、法人で最高1万元の罰金が科されるとされていました。今回の11月の改正でどこまで罰則が強化されるかは、続報の確認が必要です。

全国レベルで進む無人機管理制度の整備

北京市の規制は特に厳格ですが、中国国内では他都市でもドローン規制が広がっています。例えば2026年の全国人民代表大会(全人代)などの重要行事の際には、公安当局による一時的なドローン禁止令が発出されるなど、政治的なイベントに合わせた規制強化も報告されています。北京市に限らず、要人や重要施設が集まる地域では、平時からドローンの飛行が厳しく制限される傾向にあると考えられます。

飛行管理条例と運行安全規則(2024年1月施行)

2024年1月1日、中国国務院と中央軍事委員会が公布した「無人駕駛航空器飛行管理暫行条例」(国令第761号)と、「民用無人駕駛航空器運行安全管理規則」(CCAR-92)が施行されました。中国民用航空局(CAAC)の解説によると、この条例は無人機の実名登録・アクティベーション、飛行区域の制限、緊急時対応、ネットワーク情報セキュリティなどに関する規定を、無人機システムの設計・生産・使用の各段階に義務付けるものです。(参照:解读丨强制性国家标准《民用无人驾驶航空器实名登记和激活要求》| 中国民用航空局)

実名登録の義務化と治安管理処罰法への編入

2026年5月1日からは、無人機の実名登録・アクティベーションに関する強制国家標準(GB 46761-2025)が正式に施行され、機体の所有者情報や製品識別番号などを登録することが義務付けられました。

また、2026年1月1日には改訂版の「中華人民共和国治安管理処罰法」が施行され、ドローンが正式に規制対象に加えられており、飛行計画の未届け出や飛行禁止区域への進入は処罰の対象となっています。(参照:【中国】治安管理処罰法の改正 | 外国の立法 No.306-2 国立国会図書館 調査及び立法考査局)

輸出管理の強化

国内での使用規制だけでなく、輸出面での管理強化も進んでいます。中国商務部は2023年9月、大量破壊兵器の拡散やテロ、軍事目的での使用が明らかな場合にドローンや関連品目(エンジン、赤外線撮像機器など)の輸出を禁止する臨時的な輸出管理を導入しました。(参照:中国商務部によるドローン及びその関連品目の輸出規制について | CISTEC)

輸出管理の厳格化は、ドローンに限った話ではありません。デュアルユース(軍民両用)の文脈で近年特に注目を集めたのが、レアアース(希土類)をめぐる日本人拘束事案です。日本経済新聞の報道によれば、2026年5月、中国遼寧省大連で富士電機グループの社員2人が、レアアース製品の輸出に関する法令違反の疑いで中国当局に拘束され、その後正式に逮捕されました。

この事案は、ドローンの輸出管理を含むデュアルユース規制がドローン業界固有の問題ではなく、レアメタルや素材、部品といった幅広い品目に及ぶ中国の輸出管理法制全体の一部であることを示しています。

DJI公式サイトが案内する基本的な飛行ルール

中国民用航空局(CAAC)の規制案内
引用:Mainland China - Flying Tips | DJI

CAACによる規制の全体像は前述のとおりですが、実際に中国国内でドローンを飛ばす際の実務的なルールについては、機体メーカーであるDJIが公式サイトで飛行者向けにまとめています。DJIの案内によれば、CAACの規則のもとで基本的に求められるルールは以下の通りです。(参照:Mainland China - Flying Tips | DJI)

項目内容
飛行前の確認現地の航空当局のウェブサイトで最新の規則を確認し、事前に機体を登録する
目視・夜間飛行操縦者は機体を常に目視の範囲内に置き、夜間飛行は禁止
高度制限CAACが定める高度制限(120m)を超えないこと
物件投下機体からの物品の投下・輸送は禁止
年齢制限18歳未満の操縦者は保護者の監督下での飛行が必要
商用利用商用目的で飛行させる場合は営業許可の取得が必要
禁止区域空港、国境、軍事エリア、政府機関、発電所・変電所、港湾、鉄道、道路、人が集まる場所などには近づかない
その他賠償責任保険への加入、飲酒・薬物の影響下での飛行禁止

DJIはこれらのルールについて、あくまで参考情報であり、変更される可能性があるため、飛行前に現地の規則を確認し、必要に応じて当局に相談するよう案内しています。TV番組のロケやYouTubeの撮影などで渡航する場合でも、無断での飛行・撮影は絶対に避け、上記の条件を満たしていたとしても、大使館を通じて確認を取るなど、慎重な対応を行なってください。

✎ AIS Insight

本記事でこれまで取り上げてきた北京市の規制強化や、全国レベルでの実名登録義務化は、こうしたDJIが案内する基本ルールのさらに上に、都市単位・国レベルで積み重なる形で運用されているものだといえます。特に北京市のように機体の所持自体が禁止される地域では、上記のような一般的な飛行ルールを守るだけでは対応できない点に注意してください。

まとめ|規制強化の背景にある「低空経済」との綱引き

北京市の一連の規制、そして全国レベルでの実名登録・飛行管理制度の整備を通じて見えてくるのは、安全保障・治安維持を優先する動きと、ドローンや空飛ぶクルマといった「低空経済」を国家戦略的新興産業として育成しようとする動きが、同時並行で進んでいるという構図です。

北京市のように首都機能・要人警護の観点から極端に厳格な規制がしかれる都市がある一方、地方都市や産業振興区域では低空経済の育成に力点を置く動きも見られます。中国国内のドローン規制は一律ではなく、地域や目的によって強弱に差があることを踏まえたうえで、今後も北京市の11月改正の詳細や、他都市への波及の有無を注視していく必要がありそうです。

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AISブログ編集部

AISブログ編集部

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