GIS・GPS・GNSSは何が違う?それぞれの役割を解説

GIS・GPS・GNSSは何が違う?それぞれの役割を解説

ドローンによるインフラ点検やスマート農業、防災DXなど、位置情報を活用した取り組みが企業や自治体で広がっています。こうした文脈の中で、「GIS」「GPS」に加えて「GNSS」という言葉を目にする機会も増えてきました。

ところが、この3つの言葉を混同したまま使っている方は少なくありません。GIS・GPS・GNSSはいずれも位置情報に関わる用語でありながら、実際に指しているものはまったく異なります。特にGPSとGNSSは、どちらも衛星を使った測位に関わる言葉であるだけに違いがわかりにくく、会議や商談で聞かれても今さら人には聞きづらいという方もいるかもしれません。

本記事では、GIS(地理情報システム)・GPS(全地球測位システム)・GNSS(衛星測位システムの総称)それぞれの定義、3者の関係性と実務での使い分けのポイントを解説します。

この記事のポイント
  • GISは位置情報を分析・可視化する「システム」、GNSSは位置を測る衛星測位技術の総称
  • GPSはGNSSを構成する一つのシステムに過ぎない(GNSS=GPS+GLONASS+Galileo+BeiDou+みちびき等)
  • 実務・機器選定では、GPS単独よりも複数システムに対応する「マルチGNSS」対応が重視されやすい

GISとは何か

GIS(ジーアイエス)とは、Geographic Information System(地理情報システム)の略称です。国土地理院は、GISを「地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術」と説明しています。(参照:地理情報システム(GIS)とは | 国土地理院)

かみ砕いて言えば、GISは地図の上にさまざまなデータを重ね合わせ、目に見える形にして分析するための仕組みです。人口統計、道路網、土地利用、災害リスクといった情報を1枚の地図上に重ねることで、単独のデータだけでは見えてこない傾向や関係性を把握できるようになります。

日本でGISの整備が本格的に進んだきっかけの一つは、1995年の阪神・淡路大震災でした。被災状況の把握や復旧対応において地理情報の重要性が改めて認識され、政府によるGIS推進の取り組みが加速したという経緯があります。

GISの仕組みや具体的な活用事例についてさらに詳しく知りたい方は、下記記事もあわせてご覧ください。

GPSとは何か

GPSは、Global Positioning System(全地球測位システム)の略称で、アメリカが開発・運用している衛星測位システムの固有名称です。日本の準天頂衛星システム「みちびき」を運営する内閣府の公式サイトでは、衛星からの電波を目印にして自分がいる場所を知ることを「衛星測位」と呼び、その代表例としてGPSが挙げられています。(参照:みちびき(準天頂衛星システム)| 内閣府)

カーナビやスマートフォンの地図アプリで「現在地」が表示される仕組みの多くは、このGPSからの電波を受信して位置を計算しています。そのため日本では、衛星測位そのものを指す一般名詞のように「GPS」という言葉が使われることが多いのが実情です。しかし正確には、GPSは数ある衛星測位システムのうち、アメリカが運用する1つのシステムの名称に過ぎません。この「数ある衛星測位システム」の全体像を指す言葉が、次に説明するGNSSです。

GNSSとは何か

GNSS(ジーエヌエスエス)とは、Global Navigation Satellite System(衛星測位システム)の略称で、GPSのような衛星測位を行う仕組み全体を指す総称です。GPS以外にもロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国のBeiDou、そして日本のみちびき(QZSS)といった衛星測位システムがあり、これらをまとめてGNSSと呼びます。(参照:衛星情報 | みちびき(準天頂衛星システム)公式サイト)

つまりGPSは「GNSSというグループに属する1つのシステム」であり、GNSSはそのグループ全体を表す上位概念にあたります。両者は対立する言葉ではなく、包含関係にあると理解すると整理しやすいでしょう。GNSSを構成する主なシステムは、以下のとおりです。

システム名運用主体位置づけ・特徴
GPSアメリカ最も普及している衛星測位システム。中軌道上の衛星群で構成される
GLONASSロシアGPSと並ぶ主要システムの一つ。独自の原子時計を搭載した衛星で構成される
Galileo欧州連合(EU)高精度な原子時計を搭載し、時刻管理の精度を強みとする
BeiDou(北斗)中国複数の軌道を組み合わせて構成される中国独自のシステム
みちびき(QZSS)日本日本の準天頂衛星システム。GPSを補完・補強する位置づけ

これら複数のシステムを組み合わせる「マルチGNSS」も重視されています。内閣府のみちびき公式サイトによると、GPS単独では都市部のビルの谷間や山間部など上空の見通しが悪い場所で電波が遮られ、「可視衛星数が減り、位置情報が安定的に得られないことがあった」ことから、みちびきをはじめとする他のシステムを組み合わせることで、常時受信できる衛星の数を増やし、安定した高精度測位を可能にすると説明されています。加えて、みちびきはGPSと互換性があるため、安価な受信機で位置情報ビジネスの発展が期待できるという経済的なメリットも紹介されています。(参照:みちびきとは | 内閣府)

こうした背景から、ドローンや測量機器、位置情報サービスの選定においては、「GPS対応」かどうかだけでなく、複数のGNSSに対応する「マルチGNSS対応」の機器かどうかが、測位精度や安定性を左右する重要な判断材料になります。

GISとGNSS・GPSの関係性

GIS・GNSS・GPSの関係性

ここまでの内容を整理すると、GISとGNSS(GPSを含む衛星測位システム全体)は対立する概念ではなく、役割が異なる補完関係にあると理解するとわかりやすいでしょう。GNSSは「位置を測る技術」、GISは「測った位置情報を含む、さまざまなデータを分析・可視化するシステム」です。

GISが扱うデータは、GNSSによる測位データだけではありません。衛星画像や航空写真、住所・地番データ、IoTセンサーの計測データ、人口統計や気象データなど、位置に紐づくあらゆる情報がGISの分析対象になり得ます。GNSS(GPSはその一種)は、GISが扱う数あるデータ取得手段のうちの一つに過ぎないという点が、両者の関係を理解するうえでの鍵になります。

項目GIS(地理情報システム)GNSS(衛星測位システムの総称)
正式名称Geographic Information SystemGlobal Navigation Satellite System
位置づけ位置情報データを管理・分析・可視化する「システム」衛星の電波で現在地を測る「測位技術」の総称
構成・扱う情報GNSSデータ、衛星画像、住所データ、センサーデータ、統計データなど多様GPS(米)・GLONASS(露)・Galileo(欧)・BeiDou(中)・みちびき(日)などの総称
主な運用主体国・自治体・企業がそれぞれ目的に応じて構築・活用各国・地域の政府がそれぞれ運用。日本はみちびきがGPSを補完
身近な例ハザードマップ、都市計画支援システム、配車・物流システムカーナビ、スマートフォンの現在地表示

実務でのGISとGNSS・GPSの使い分け

カーナビ・地図アプリはGPSで十分

自動車のカーナビゲーションシステムやスマートフォンの地図アプリのように、「今どこにいるか」がわかれば目的を果たせる用途では、GPS(および他のGNSS)からの測位情報だけでもサービスとして成立します。もちろんアプリの裏側では地図データを扱うためにGISに近い技術も使われていますが、利用者が体感する部分としては、GPSによる現在地把握が中心的な役割を果たしています。

インフラ点検や都市計画にはGISが必要

一方、複数のデータを重ね合わせて分析・判断する業務には、GISが欠かせません。前述のEsri Japanは、GISの活用分野として都市計画・不動産における出店適地の選定、物流における配送ルートの効率化、道路や水道管などのインフラ管理、ハザードマップ作成による防災、農業・環境分野でのデータ活用などを挙げています。

たとえばインフラ点検の現場では、ドローンで撮影した空撮画像や点検データに、GPSで取得した位置情報、既存の設備台帳、過去の点検履歴などを重ね合わせて分析することで、劣化が進みやすい箇所の傾向をつかんだり、点検の優先順位を判断したりできるようになります。GPSの位置情報だけを見ていても、こうした複合的な分析はできません。

GISが組み合わせて分析するデータの例
  • GPS・GNSSによる測位データ
  • 衛星画像・航空写真・ドローン空撮データ
  • 住所・地番データ、道路網、設備台帳
  • 気象データ、人口統計などの各種統計情報

GISとGNSS・GPSを自社の業務にどう活かすか

DX推進や安全管理、調達を担当する立場からGIS・GPS・GNSSの違いを見ると、押さえておきたい視点は2つあります。1つ目は「自社の課題が現在地の把握だけで完結するのか、それとも複数データの重ね合わせ分析を必要とするのか」の切り分けです。位置情報を使った新しいサービスや業務改善を検討する際、測位機能を搭載した機器を導入すれば十分なのか、GISのような分析基盤まで整備する必要があるのかによって、必要な投資やシステムの規模は大きく変わってきます。

たとえば「従業員や車両の位置を把握したい」という要望であれば、GPSベースの位置管理サービスで足りるケースが多いでしょう。一方、「複数拠点の設備劣化状況を地図上で一元管理し、優先順位をつけて点検計画を立てたい」といった要望には、GISの導入が現実的な選択肢になります。GIS・GPSという言葉の違いを正しく理解しておくことは、こうした要件整理の第一歩になるはずです。防災分野におけるGIS活用の広がりについては、2026年設置予定の防災庁とは?これまでの経緯と役割、最新動向を解説 でも触れているため、あわせてご参照ください。

まとめ

GIS・GPS・GNSSは、いずれも位置情報に関わる言葉でありながら、それぞれ異なる役割を担っています。GISは「位置情報を含むデータを分析・可視化するシステム」、GNSSは「位置を測る衛星測位技術の総称」、そしてGPSはそのGNSSを構成する一つのシステム(アメリカが運用するもの)に過ぎません。カーナビやスマホの地図アプリのように現在地の把握だけで完結する用途にはGNSSで十分ですが、インフラ点検や都市計画、農業のセンシングのように複数の位置情報を重ね合わせて分析する用途には、GISの活用が欠かせません。機器選定の場面では、GPS単独対応かマルチGNSS対応かという視点も、測位の安定性を左右する判断材料になります。AISでは、ドローンやセンサーと組み合わせたGIS活用の事例についても、今後の記事で取り上げていく予定です。

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AISブログ編集部

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「専門性の高いテーマをわかりやすく」を合言葉に、AI・ドローン・防災・安全保障・インテリジェンス領域の情報を発信中。官公庁や企業の一次情報を情報源とし、参照元を明記した正確な情報発信を心がけています。

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