ドローンを業務で活用する企業や自治体が増える一方、「どこを飛ばせないのか」という飛行禁止区域のルールは、法改正のたびに範囲や対象が変わるため把握しづらいテーマです。特に2026年(令和8年)7月14日には、重要施設周辺の飛行を規制する法律の改正法が施行され、規制対象となる施設の種類が広がりました。
「飛行禁止区域」という言葉には、実は複数の法律に基づく規制が混在しています。1つは国会議事堂や大使館といった重要施設の周辺を規制する「小型無人機等飛行禁止法」(警察庁所管)、もう1つは空港周辺や人口の多い地域、高度制限などを定める「航空法」(国土交通省所管)です。
この記事では、令和8年改正を踏まえて前者の仕組みを中心に整理し、飛行前に確認すべきポイントをチェックリスト形式でまとめます。
- 2026年7月14日、重要施設周辺のドローン飛行を規制する法律の改正法が施行
- 規制は「レッドゾーン」(施設敷地の直上空、飛行禁止)と「イエローゾーン」(周囲おおむね1,000m、飛行禁止)の2段階
- 改正で「対象特別要人所在施設」「国際会議の準備・運営のための会議場施設等」が規制対象に追加
ドローンの飛行禁止区域に関わる2つの法律
ドローンの飛行を制限する法律は1つではありません。代表的なものとして、次の2つを押さえておく必要があります。
| 法律 | 所管 | 規制の内容(概要) |
|---|---|---|
| 小型無人機等飛行禁止法 | 警察庁 | 国会議事堂・大使館・自衛隊施設など重要施設周辺の上空飛行を規制 |
| 航空法 | 国土交通省 | 空港周辺、人口集中地区の上空、高度150m以上の飛行など、無人航空機全般の飛行ルールを規制 |
本記事で扱うのは主に前者の小型無人機等飛行禁止法です。航空法についても、空港周辺や人口の多い地域を飛ばす場合には別途許可・承認が必要になるケースがあるため、両方の規制に該当しないかを確認することが欠かせません。航空法が定める具体的な飛行禁止空域については、記事後半の「航空法が定める飛行禁止空域」で詳しく解説します。(参照:無人航空機 | 国土交通省)
小型無人機等飛行禁止法とは
正式名称は「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(平成28年法律第9号)です。国会議事堂や首相官邸、大使館、自衛隊施設といった、警備上重要とされる施設の周辺上空でドローン等の飛行を禁止する法律で、2016年の施行以来、社会情勢の変化に応じて対象施設や規制の枠組みが見直されてきました。2026年7月14日には、この法律の一部を改正する法律が施行されています。(参照:小型無人機等飛行禁止法関係 | 警察庁)
レッドゾーンとイエローゾーン|範囲と罰則

規制区域は「レッドゾーン」と「イエローゾーン」の2段階に分かれています。それぞれ範囲と違反時の罰則が異なるため、混同しないよう注意が必要です。
| 区分 | 範囲 | 罰則(違反時) |
|---|---|---|
| レッドゾーン | 対象施設の敷地または区域の直上空 | 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| イエローゾーン | レッドゾーンの周囲おおむね1,000mの上空 | 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
警察官による飛行中止等の命令に従わなかった場合も、レッドゾーンでの違反と同じ罰則が科されます。イエローゾーンはレッドゾーンよりもかなり広い範囲に及ぶため、「施設の敷地に近づかなければ大丈夫」と考えるのは誤りです。実際には施設から1km圏内という広いエリアが規制対象になる点を押さえておきましょう。
飛行禁止の対象施設

規制対象となる施設は、大きく分けて次のような種類があります。
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 国の重要施設等 | 国会議事堂、内閣総理大臣官邸、最高裁判所庁舎、皇居等 |
| 危機管理行政機関の庁舎 | 危機管理を担う関係省庁の庁舎 |
| 対象政党事務所 | 各政党の本部事務所 |
| 外国関連施設 | 大使館等、外国要人の所在施設 |
| 防衛・空港・エネルギー関連 | 自衛隊施設、在日米軍施設、対象空港、対象原子力事業所 |
なお防衛関係施設と対象空港のレッドゾーンについては、後述する飛行禁止の例外のうち「施設管理者の同意」に基づくものしか認められません。他の施設よりも規制が厳格になっている点に注意が必要です。
令和8年7月14日改正で何が変わったか
2026年7月14日に施行された改正法では、規制対象となる施設の種類に「対象特別要人所在施設」と「国際会議の準備・運営のための会議場施設等」の2つが新たに加わりました。
「対象特別要人所在施設」は、要人の身辺警護等に関連する施設が新たに規制対象へ加えられたものとみられます。また「国際会議の準備・運営のための会議場施設等」は、国際会議の開催に伴って使用される会場等が対象になったとみられます。改正の詳細な背景や具体的な指定施設については、警察庁のページ内にある指定関係の情報を個別に確認する必要があり、既存の重要施設周辺だけでなく、要人の動静や国際会議の開催状況によって規制区域が一時的・恒常的に広がる可能性がある、という点は業務でドローンを運用する事業者にとって常に注意しておく情報です。
点検・測量・空撮などでドローンを日常的に運用する事業者にとって、この種の改正は「知らなかった」では済まされないリスクになり得ます。特に国際会議やイベントに合わせて一時的に規制区域が設定されるケースは、通常の地図確認だけでは見落としがちです。定期的にドローンを飛行させる業務フローがある場合、案件ごとの飛行前チェックに「直近の規制改正・指定施設の追加」を確認する項目をあらかじめ組み込んでおくと、こうした見落としのリスクを減らせるでしょう。
例外的に飛行が認められるケースと許可手続き
小型無人機等飛行禁止法には、次の3つの例外が定められています。
- 施設管理者、または管理者から同意を得た者による飛行
- 土地所有者等、または同意を得た者による飛行
- 国・地方公共団体が業務のために飛行させる場合
これらの例外に該当しない場合でも、あらかじめ手続きを行うことで飛行が可能になるケースがあります。手続きの窓口は警察署のほか、e-Gov電子申請サービスを利用したオンライン申請にも対応しています。ただし前述のとおり、防衛関係施設と対象空港のレッドゾーンでは、施設管理者の同意による例外のみが認められる点に注意しましょう。
航空法が定める飛行禁止空域
ここからは、前述のもう1つの規制体系である航空法について解説します。小型無人機等飛行禁止法が重要施設の周辺というピンポイントの区域を規制するのに対し、航空法は空港周辺や高度、人口密集地など、無人航空機(100g以上の機体)全般の飛行環境に関わる4種類の空域を規制対象としています。
4種類の空域と許可要否
| 空域 | 定義(概要) | 留意点 |
|---|---|---|
| ①空港等の周辺の空域 | 進入表面・転移表面・水平表面等の上空、および国土交通大臣が告示で定める空域 | 事前に国土交通大臣の許可が必要。境界付近は空港管理者へ直接確認 |
| ②緊急用務空域 | 警察・消防等の緊急活動を行う航空機の飛行が想定される場合に指定 | 国土交通省のサイトやXで公示。他の許可があっても指定中は原則飛行禁止 |
| ③地表・水面から150m以上の高さ | 地表または水面から150m以上の高さの空域 | 許可申請の前に、管轄の管制機関との調整が必須 |
| ④人口集中地区(DID)の上空 | 国勢調査に基づき5年ごとに設定される人口集中地区(工業専用地域等の告示除外区域を除く) | 飛行許可が必要。地理院地図やe-Statの地図で確認可能 |
いずれの空域に該当する場合も、原則として国土交通大臣の許可または承認が必要です。該当するかどうかは地理院地図で確認できますが、空港周辺など境界付近での飛行では、空域を所管する空港管理者や管制機関への直接確認が欠かせません。
小型無人機等飛行禁止法との違い
なお、前述の小型無人機等飛行禁止法にも「対象空港」という区分があり、その周辺地域(イエローゾーン相当)が規制対象になりますが、これは航空法の「①空港等の周辺の空域」とは別の法律に基づく別の区域です。同じ「空港周辺」という言葉でも、根拠となる法律によって区域の定義や範囲の算定方法が異なるため、混同しないよう注意しましょう。
また、航空法と小型無人機等飛行禁止法とでは、重量による適用除外の扱いが異なる点にも注意が必要です。航空法上の「無人航空機」は100g以上の機体を指し、100g未満の軽量な機体は原則としてこれらの規制対象外となります。一方、小型無人機等飛行禁止法には重量による除外規定がなく、100g未満の機体であってもレッドゾーン・イエローゾーンでの飛行は禁止されます。小型な機体だから航空法上の規制を受けないとしても、重要施設周辺では別の法律により飛行が禁止されるケースがある、という点を混同しないようにしましょう。
飛行の方法に関する規制もある
なお航空法には、これら4種類の空域規制に加えて、夜間飛行や目視外飛行、人・物件との距離、催し場所上空の飛行、危険物輸送、物件投下といった「飛行の方法」に関する規制もあり、これらも別途承認が必要になる場合があります。
飛行禁止区域の確認方法
自分が飛ばそうとしている場所が規制区域に該当するかどうかは、国土地理院が提供する「地理院地図」で確認できます。地理院地図では、小型無人機等飛行禁止法に基づく規制区域と、航空法に基づく規制を重ねて表示することも可能です。都心部など重要施設が集中するエリアでは、広い範囲が規制の対象になっている場合があるため、事前確認が欠かせません。
このほか、地図上で飛行禁止区域を確認できるサービスとしてドローンフライトナビのようなツールも公開されています。こうした民間サービスは補助的な確認手段として便利ですが、最終的な判断は必ず地理院地図や所轄の公安委員会への確認と合わせて行うようにしましょう。
なお、飛行禁止区域だけでなく、ドローンを飛ばせる高度や目視外飛行の可否といった「飛行レベル」の区分もあわせて理解しておくと、自社の運用が航空法上どのカテゴリに該当するかを判断しやすくなります。
飛行前に確認したいチェックリスト
ドローンを飛行させる前には、次の項目をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
- 飛行予定地がレッドゾーン・イエローゾーンに該当しないか、地理院地図等で確認したか
- 該当する場合、施設管理者・土地所有者の同意や許可申請が必要かどうかを確認したか
- 航空法上の規制(空港周辺、人口の多い地域、高度制限等)にも別途該当しないか確認したか
- 令和8年7月14日改正で新たに対象となった施設(要人所在施設・国際会議施設等)が飛行予定地の近くにないか確認したか
特に業務でドローンを繰り返し運用する場合は、案件ごとに一度確認して終わりにせず、飛行のたびにこのチェックリストを見直す運用にしておくと、規制改正による見落としを防ぎやすくなります。
まとめ
ドローンの飛行禁止区域は、小型無人機等飛行禁止法によるレッドゾーン・イエローゾーンの規制と、航空法による空港周辺・高度制限等の規制が別々に存在する、やや複雑な仕組みになっています。2026年7月14日の改正では、対象特別要人所在施設と国際会議関連施設が新たに規制対象に加わり、規制がおよぶ範囲は今後も情勢に応じて変化していく可能性があります。業務でドローンを飛行させる担当者は、飛行のたびに地理院地図等で最新の規制区域を確認し、該当する場合は許可手続きを取るという基本動作を徹底することが、トラブルを避ける最も確実な方法といえるでしょう。
※本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。最新の情報については、各省庁のWebサイトをご覧ください。