【2026年9月】テラドローン決算発表!防衛事業と内製化に注目

【2026年9月】テラドローン決算発表!防衛事業と内製化に注目

2026年9月14日、「テラドローン」株式会社(東証グロース:278A)が2027年1月期第2四半期(中間期)決算を発表しました。同社はドローンを活用した産業用ソリューションと、運航管理システム(UTM、多数のドローンが安全に飛行できるよう管制する仕組み)を主力事業とする企業です。

今回の決算発表では、業績数値の公表と同時に、防衛事業に関する複数の発表が一気に行われた点が目を引きます。ウクライナ企業の子会社化、国産部品の自社開発、防衛装備庁からの受注、新会社設立など、内容は多岐にわたります。本記事では、テラドローンの防衛事業戦略の全体像を整理します。

この記事のポイント
  • 2026年9月14日の決算発表と同時に、防衛事業関連の発表を複数まとめて実施
  • ウクライナのKurin Technologiesを子会社化し、迎撃ドローン市場に本格参入
  • ウクライナ拠点企業とのJV設立準備は条件面の折り合いがつかず中止

決算発表までの流れ

現在、日本を含む各国では、防衛力強化に向けた予算・体制整備が進んでいます。日本国内では2022年に改定された安全保障関連の基本方針のもと、防衛費の増額や新技術の導入が進められてきました。

こうした流れの中、防衛装備庁は2026年、無人機による迎撃能力の確保を目的とした「迎撃ドローン早期取得プログラム」を実施しました。テラドローンは同プログラムに応募した38社の中から2026年7月にまず実証試験の供試器材として選定され2026年8月には国産迎撃ドローン「Terra B1」が実証試験に単独で合格しています。

迎撃ドローン事業を一気に加速

今回の発表の中心となったのが、「迎撃ドローン」(飛来する小型無人機を検知・追尾し、体当たりや妨害などによって無力化する専用ドローン)事業の急拡大です。

ウクライナのKurin Technologiesを子会社化

テラドローンは連結子会社のTerra Defense Europe OUを通じ、ウクライナ・キーウ拠点のKurin Technologiesに出資し、連結孫会社化したと発表しました。Terra Defense Europe OUは、同社の2027年1月期第2四半期決算短信でも当中間期に新規連結入りした子会社として記載されています。Kurin Technologiesは小型迎撃ドローン「KT-1」「KT-2」を開発し、ウクライナの前線ですでに実戦運用・販売されている実績を持つ企業で、生産能力は月産1,000機を超えるといいます。

同社が公表した内容によると、ウクライナの戦場ではドローンが原因となる死傷者の割合が2022年の10%未満から2025年には最大80%まで急増しており、脅威の中心はFPVドローンや偵察ドローンなど低空・近距離を飛行する小型攻撃型ドローンに移っているとのことです。テラドローンはKurinの実戦ノウハウに、自社のAI自律化技術・量産体制・海外展開の経験を組み合わせ、ウクライナ・欧州・日本・同盟国市場への展開計画を紹介しています。(参照:Kurin Technologies社の子会社化に関するお知らせ | Terra Drone)

チェコTRLとジェット型迎撃ドローンで協業

同日、テラドローンはチェコ拠点のTRL(ロケット型迎撃ドローンを含む防衛向け無人機システムを開発する企業)と、ジェット型迎撃ドローンの製品化とジョイントベンチャー設立に向けた検討を本格化すると発表しました。想定されているのは500km/h級を上回る飛行性能を持つジェットエンジン搭載機で、高速化するシャヘド系無人機(ロシア軍が使用する徘徊型攻撃無人機の一種)への対処を主眼としています。レーダーやセンサー、指揮統制システム、地上管制システムとの連接を前提に設計し、欧州域内の製造基盤を活用して輸出対応を図る方針です。(参照:TRLとの協業に関するお知らせ | Terra Drone)

低コストの近距離用「Terra A1」「Terra B1」と、より高速・高性能なジェット型を組み合わせることで、複数の脅威レベルに対応する多層的な迎撃網(カウンターUAS)を構築する狙いがあるとみられます。

製品・取り組み 開発主体 特徴・想定用途
Terra A1 / Terra B1 テラドローン 低コストの近距離用迎撃ドローン。防衛装備庁の調達プログラムで採用
KT-1 / KT-2 Kurin Technologies(子会社) 前線の低空・近距離を守る小型迎撃ドローン。実戦運用実績あり
ジェット型迎撃ドローン(開発検討中) TRL(協業先) 500km/h級以上の高速機。高速無人機への対処を想定

このほか、空港や発電所といった重要インフラを対象に、無人機の検知から識別、対処までを一気通貫で行うC-UAS(Counter-UAS、対無人機システムの略)システムの開発にも着手したと発表されています。同社の決算説明資料では、その背景として2026年1月以降ドイツ・ライプツィヒ空港でドローンによる航空交通妨害が18件発生したことや、2026年5月にルーマニア・コンスタンツァ港で海上ドローンが自爆する事案が発生したことが紹介されており、欧州で重要施設周辺への無人機脅威が顕在化している状況がうかがえます。日本国内でも重要施設の上空における小型無人機等の飛行を制限する法制度が整備されていますが、検知・迎撃までを担う仕組みは発展途上であり、今後の議論のポイントになりそうです。

国産化戦略:フライトコントローラーとバッテリーの内製化

テラドローンは同日、防衛用ドローン向けの国産フライトコントローラー「Terra DFC」を自社開発し、量産体制を構築したことも発表しました。フライトコントローラーは姿勢制御やモーター制御、センサー処理、飛行制御を統合するドローンの「頭脳」にあたる部品です。

国内の産業用ドローン市場では機体の約9割を海外製が占め、バッテリーやモーター、フライトコントローラーといった重要部品も海外調達に依存している状況にあるなか、無人航空機は経済安全保障推進法上の特定重要物資に指定されており、政府は2030年時点で約8万台の量産基盤構築を目標に掲げています。

防衛用途では地政学リスクや輸出規制、供給途絶、サイバーセキュリティ上の懸念への対応が特に重要とされ、Terra DFCは防衛省向け「汎用型防衛ドローン」への搭載を前提に、国内での品質管理・改修体制とあわせて開発されました。(参照:Terra DFC自社開発に関するお知らせ | Terra Drone)

また2026年7月6日には、円筒形セルを用いた国産ドローン向けバッテリー事業への参入も発表済みです。提携先は非開示ながら、累計約50万パックの供給実績を持つ国内企業とされています。部品レベルまで含めた国産サプライチェーンの構築は、経済安全保障や国内産業育成の観点からも注目される取り組みです。

事業体制と資金調達の状況

決算資料によると、2Q累計の連結業績は売上高22億3,500万円(前期比+2億9,200万円)と増収でしたが、防衛事業やサウジアラビア等での体制拡大に伴う販管費増加により、営業利益は8億1,900万円の赤字となりました。親会社株主に帰属する当期純利益も6億8,000万円の赤字です。運航管理事業では、ベルギー国防省管轄の空域向けUTM導入・運用案件を約2億700万円・21か月で受注しており、同社は国防軍向けUTM受注として世界初としています。

項目 2Q累計実績 前期比
売上高 22億3,500万円 +2億9,200万円
営業利益 ▲8億1,900万円 ▲1億5,300万円
親会社株主に帰属する当期純利益 ▲6億8,000万円 ▲2億8,600万円

会社側は2Q累計を期初想定通りの進捗とし、3Q以降は防衛事業の売上計上開始などにより段階的な増収を見込んでおり、通期の連結業績は期初想定より上振れる見通しとしています。防衛事業の推進体制としては、国内拠点となる「Terra Defense Japan株式会社」を新たに設立しました。資本金は4,500万円で、テラドローンが全額出資し、防衛用途の無人航空機・関連システムの販売や保守、ロジスティクス管理、技術連携を担う予定です。

海外展開についても、UAE防衛プライム大手のEDGEグループへ迎撃ドローンを含む防衛アプリケーションを受注したほか、マレーシアの中核防衛企業DEFTECH(DRB-HICOMグループ)との戦略的協業を開始しています。9月上旬にはベルギー国防相の来日にあわせ、徳重社長らが約40分の会談を行ったことも明らかにされました。

順調な面ばかりではない:BesomarとのJV設立準備を中止

一方で、すべての取り組みが計画通りに進んでいるわけではない点も正直に触れておく必要があります。テラドローンは同日、連結子会社Terra Inspectioneering B.V.を通じたウクライナ拠点企業Besomarとの合弁会社設立準備を中止したと発表しました。これは2026年6月15日の取締役会で決議していたもので、あわせて発表が予定されていた偵察用ドローンの新製品「Terra C1」の発表も見送られています。中止の理由について、同社は出資条件等の協議を進めたものの、条件面で双方の折り合いがつかなかったためと説明しています。損失の発生は見込んでおらず、2027年1月期の連結業績への影響もないとしています。

海外の防衛関連企業との連携は、規制環境や出資構造、技術移転の条件など調整すべき論点が多く、必ずしもすべてが成立に至るわけではないという実態を示す事例といえるでしょう。

まとめ:決算発表が示すテラドローンの防衛事業戦略

2026年9月14日の一連の発表を整理すると、テラドローンは「迎撃ドローンの展開加速」「国産サプライチェーンの構築」「海外での事業基盤拡大」という3本柱で防衛事業を急速に立ち上げていることが分かります。ウクライナ企業の子会社化や欧州企業との協業によって実戦知見と高性能機の両方を取り込みつつ、フライトコントローラーやバッテリーの国産化によって経済安全保障上の要請にも応えようとする姿勢がうかがえます。

一方でBesomarとのJV中止が示すように、海外連携がすべて計画通りに進むとは限りません。ドローンや位置情報分野に携わるビジネスパーソンにとって、防衛需要の拡大が国内サプライチェーンや部品調達のあり方にどのような影響を及ぼすかは、引き続き注目のテーマです。

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AISブログ編集部

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