【10月2日公募開始】防衛省版SBIR制度とは何か。最新情報を紹介

【10月2日公募開始】防衛省版SBIR制度とは何か。最新情報を紹介

防衛省は2026年9月25日の記者会見で、「防衛省版SBIR制度」を新たに開始すると発表しました。無人機やAIといった民生分野の先端技術を、防衛省・自衛隊の活動に迅速に取り込むための仕組みで、スタートアップ企業の技術・アイデアを広く募集することを目指します

公募は2026年10月2日に開始され、10月6日には公募説明会も予定されています。本記事では、「SBIRとはそもそも何か」という基礎知識を押さえたうえで、防衛省版SBIRについて現時点でわかっていること、そして今後発表が見込まれる情報を整理します。防衛関連ビジネスに携わる方はもちろん、自社の技術が防衛分野で活用できないかと考えている技術系企業の担当者にとっても、押さえておきたい制度動向です。

この記事のポイント
  • 防衛省版SBIR、2026年10月2日に公募開始
  • 研究開発課題は陸自・海自・空自の現場ニーズに基づく4件を提示
  • 詳細な選考基準等は10月6日の公募説明会以降に判明する見込み

SBIRとはそもそも何か

SBIRは「Small Business Innovation Research」の略で、中小企業やスタートアップの研究開発を支援するための制度の総称です。もともとは米国で生まれた仕組みで、政府が抱える課題をテーマとして示し、そこに中小企業・スタートアップの技術で応える形で研究開発を支援する点に特徴があります。

日本では内閣府が「SBIR制度」のポータルサイトを運営しており、「Small/Startup Business Innovation Research」として、スタートアップ等の研究開発を支援する補助金等の情報を集約しています。同サイトによると、SBIR制度は近年大幅にリニューアルされ、制度概要や対象者の要件、活用できる補助金などが各省庁横断で紹介されています(参照:SBIR制度ポータルサイト | 内閣府)。

つまりSBIRは特定の一省庁だけの制度ではなく、複数の省庁がそれぞれの政策課題に応じて実施する、政府主導の研究開発支援の枠組みという位置づけです。今回発表された防衛省版SBIRは、このSBIRの考え方を防衛省の調達に応用したものと理解すると全体像がつかみやすくなります。

防衛省版SBIRとは何か、現時点でわかっていること

防衛省版SBIRは、自衛隊が現場で直面する課題やニーズを研究開発課題として設定し、その解決につながる革新的な技術やアイデアをスタートアップから広く募集する制度です。小泉進次郎防衛大臣は9月25日の会見で、スタートアップの活用を「今年度中に開始する」と表明していた「ファストパス調達」の取り組みの一つと位置づけたうえで、10月2日から公募を開始すると発表しました(参照:防衛大臣記者会見(令和8年9月25日) | 防衛省)。

制度創設の背景

小泉防衛相は会見で、日本では防衛分野へのスタートアップの参入が十分に進んでいないという課題を挙げました。その背景として、スタートアップ側からは「防衛ニーズが見えにくい」「調達手続が複雑で時間がかかる」「部隊のフィードバックを得ながら実証する機会が不足している」といった声が寄せられていたと語っています。

防衛省版SBIRでは、こうした課題に対応するため、現場部隊のニーズに基づく課題をあらかじめ提示したうえで、複数のスタートアップに研究開発を実施してもらい、段階的な審査を通じて有望な技術を絞り込む仕組みが構築されました。研究開発から試験運用、装備化へとつなげる一連の流れを制度化した点が特徴です。

無人機や人工知能(AI)の技術が発展する中で、防衛省・自衛隊がこうした技術を取り入れることにより、柔軟な発想と技術力を持つスタートアップの力を活用したいという狙いがあります。

公募する7つのトピック(研究開発課題)

今回の公募では、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊それぞれのニーズに基づく、以下7つの公募トピックが示されました。

防衛省版SBIR 令和8年度の研究開発課題
  • 国内製造の部品・構成品を活用した対処用小型UAVシステム(陸上自衛隊のニーズ)
  • 国内製造の部品・構成品を活用した迎撃用UAVシステム(陸上自衛隊のニーズ)
  • 極小型の情報収集システム(陸上自衛隊のニーズ)
  • 国内製造の部品・構成品を活用した水上艦対処用小型UAVシステム(海上自衛隊のニーズ)
  • 複数UAVによる洋上警戒監視の運用を最適化するAIシステム(海上自衛隊のニーズ)
  • 補給倉庫の保管状況把握用ハードウェア(カメラ・センサ等)及び補給倉庫運用最適化支援ソフトウェアの開発 (航空自衛隊のニーズ)
  • 航空機騒音ノイズキャンセリング装置等の開発

無人航空機(UAV)関連の2課題は、いずれも国産部品の活用が条件として示されている点が目を引きます。防衛生産・技術基盤の強化という狙いが、課題設定の段階から織り込まれていることがうかがえます。

小泉防衛相はこれらの課題について、「直ちに具体的な応募に結び付かない課題もあるかもしれない」としながらも、防衛省・自衛隊の現場ニーズを広く共有すること自体に大きな意義があると述べています。今後も部隊から寄せられるニーズを踏まえ、新たな研究開発課題を設定し、順次公募していく方針も示されました。

✎ AIS Insight

今回示された4課題を見ると、攻撃的な装備に直結するUAVだけでなく、補給倉庫の運用最適化や騒音低減といった、いわば「現場の働きやすさ」に関わる課題も含まれている点が興味深いところです。防衛スタートアップというと武器そのものの開発をイメージしがちですが、実際にはGISやIoT、業務システムの知見を持つ企業にとっても参入の余地があることを示す事例だと、AISでは捉えています。

公募のスケジュールとフェーズの考え方

10月2日に公開された令和8年度防衛省版SBIR公募要領では、公募開始後にどのような流れで審査・採択が進むのかについても、公表されました。ここでは、制度の骨格となるフェーズの考え方と、選定までのスケジュールを整理します(参照:令和8年度防衛省版SBIR | 防衛装備庁)。

防衛省版SBIRは、フェーズ1からフェーズ3までを一気通貫で実施する委託事業です。各フェーズの終了時には審査委員会によるステージゲート審査が行われ、これに合格したプロジェクトのみが次のフェーズへ進める仕組みになっています。契約もフェーズごとに個別に締結されます。

ここで注意したいのは、採択やステージゲート審査の合格が、将来の装備化・量産取得を保証するものではないという点です。フェーズ3終了後の取り扱いは、研究開発の成果や試験評価の結果、防衛省・自衛隊側のニーズ、予算措置、調達制度上の手続等を踏まえて、あらためて判断されるとされています。なお、プロジェクトの進捗状況によっては、フェーズ1終了後の審査を経てフェーズ2を省略し、フェーズ3へ直接移行するケースもあるとのことです。

各フェーズの具体的な内容は以下の通りです。

段階対象企業像実施事項事業期間事業規模(委託費上限)
フェーズ1技術シーズを発展させ事業化に取り込もうとするスタートアップ等概念実証・実現可能性調査(科学技術的な実現可能性や技術的潜在性の判断、技術の基本的な原理・仕組みの確認)5か月以内2,000万円
フェーズ2フェーズ1後のステージゲート審査に合格したスタートアップ等フェーズ1の成果を前提とした研究開発及び試作2年以内数億円程度
フェーズ3フェーズ2後のステージゲート審査に合格したスタートアップ等試作品の大規模技術実証としてのアジャイル型開発(装備品等として改善すべき点を明確化し、評価と改善の循環を短期間で繰り返すことで、自衛隊の要望に最適化させ早期量産の蓋然性を高める開発方式)最長5年以内トピックに応じた規模

いずれの段階も契約形態は委託契約です。応募手続きはフェーズ1から始まります。フェーズ1に採択されたプロジェクトは、当初の採択内容に基づき、ステージゲート審査を経てフェーズ2・フェーズ3へと移行していくことが前提とされています。ただし、同等の技術が他に存在しないかを確認する目的で、フェーズ2やフェーズ3の段階で改めて公募が行われる可能性もあるとしています。また、1つの代表企業が提案できるのは、1つのトピックにつき1件までとされている点にも注意が必要です。

選定までのスケジュールは以下の通り公表されています。

スケジュール時期(予定)
公募開始令和8年10月2日(金)13:00
公募説明会令和8年10月6日(火)
公募締切令和8年11月2日(月)正午(12:00)
採択審査(書面審査)令和8年11月上旬〜12月上旬
採択結果通知令和8年12月上旬
委託契約締結令和9年2月頃

応募状況等によっては公募期間が延長されるなど、このスケジュールが変更される可能性がある点には留意してください。

採択審査では、トピックとの整合性、トピックの解決方法の新規性・革新性・実現性、研究開発計画の具体性・適切性、研究開発費用、代表企業の経営状況(執行体制・財務状況等)と研究開発実行体制、研究セキュリティに関する質問票への回答という6つの観点が総合的に評価されるとされています。

令和8年度公募説明会の概要

防衛装備庁は、公募開始に合わせて説明会を開催すると案内しています。現時点で公表されている概要は以下の通りです。

項目 内容
日時 2026年10月6日(火)10:30〜12:10(入場時間10:00〜10:30)
場所 ホテルグランドヒル市ヶ谷 瑠璃(東館3階)
参加費 無料(事前登録制)
参加人数 1社あたり1名まで
申込方法 防衛装備庁ホームページの参加申込書を提出(未提出者は参加不可)

参加できる企業には要件が定められています。科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律第2条第14項に規定される中小企業者であり、原則として設立から15年以内であること、日本で登記されている企業であること、意思決定や研究開発のための拠点が日本に存在することが条件です。

説明会では、制度や研究開発課題に関する説明、公募方法の説明に続き、個別相談の時間が設けられる予定です。希望者が多数の場合は参加できない可能性もあるとされており、オンライン配信の予定もないため、気になる方は早めのお申し込みをお勧めします。詳細は、防衛省版SBIR・令和8年度公募説明会のご案内 | 防衛装備庁をご覧ください。

防衛省版SBIRの今後の動き

防衛省版SBIRは、2026年10月2日の公募開始をもって制度が実際に動き出しました。フェーズ1〜3の制度枠組みや事業期間・規模、選定スケジュール、採択審査の基準については、前章「公募のスケジュールとフェーズの考え方」で紹介した通りですが、応募方法や詳細な公募トピックのより詳細な方法は、令和8年度 防衛省版SBIR 公募要領 | 防衛装備庁 に記載があります。

小泉防衛相は会見で、今回提示したトピックにとどまらず、今後も部隊の現場から寄せられるニーズ等を踏まえて新たな研究開発課題を設定し、順次公募していく方針を示しています。防衛省版SBIRは一度きりの公募で終わるものではなく、継続的に課題が追加されていく制度として運用される見通しです。

また、会見の質疑では、令和9年度概算要求において防衛省版SBIR制度に加え、スタートアップ向けの政府出資金制度の新設も盛り込まれたことに言及がありました。防衛分野のスタートアップ支援策が今後どのように広がっていくのか、あわせて注目したいところです。

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AISブログ編集部

AISブログ編集部

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