【2026年9月】基本方針と記者会見から見る日本政府の防衛方針

【2026年9月】基本方針と記者会見から見る日本政府の防衛方針

2026年9月17日、政府は内閣の運営方針を示した「基本方針」を閣議決定しました。翌18日には小泉防衛大臣が閣議後の記者会見に臨み、前日に総理から受け取った指示書の中身を読み上げています。わずか2日間で、政府がこれから何に力を入れるのかが、閣議決定文書と公式会見録という2つの一次資料の形で示されたことになります。本記事では、この2つの資料に書かれている内容を、防衛・安全保障に関わる部分に絞って整理します(2026年9月時点の情報です)。

この記事のポイント
  • 2026年9月17日閣議決定の基本方針は4本柱、うち1つが「外交力と防衛力の強化」
  • 翌18日の防衛大臣会見で総理指示書9項目を公表、戦略三文書の見直しは指示書の1番目
  • 防衛生産・技術基盤の強化、インテリジェンス機能、経済安全保障が2資料の共通テーマ

閣議決定された基本方針 4本柱の中身

基本方針は、次の4つの柱で構成されています。本記事では、このうち防衛・安全保障に関わる②③④を中心に見ていきます。

柱 主な内容
①「責任ある積極財政」の考え方に基づく経済財政運営 「日本成長戦略」の17の戦略分野を軸とした危機管理投資・成長投資、「地域未来戦略」に基づく産業クラスター計画、物価高への対応、税と社会保障の一体改革、外需拡大
②国民の命と暮らしを守る 自然災害対応と復興、テロ・感染症など国家的危機への対処、特殊詐欺対策、外国人との秩序ある共生社会、サプライチェーン調査、サイバーセキュリティ対策の強化
③外交力と防衛力の強化 日米同盟を基軸とした外交、「自由で開かれたインド太平洋」の進化、同志国・グローバルサウスとの連携、拉致問題、インテリジェンス機能の強化、戦略三文書の見直し
④政策広報の充実 新しい法制度や検討中の施策を分かりやすく発信

防衛に直接関わるのは③です。ここに書かれているのは、大きく3点あります。

1点目は、対外情報機能の充実や外国による不当な干渉の防止など、国家情報会議(政府の情報機能を束ねる司令塔として設けられた会議体)を中心とした政府のインテリジェンス機能の強化です。2点目は、そのインテリジェンスを活用した経済安全保障政策の推進。そして3点目が、防衛生産基盤の強化をはじめとする防衛力の抜本的強化のための戦略三文書(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画のいわゆる安保3文書)の見直しです。(参照:基本方針(令和8年9月17日閣議決定) | 首相官邸)

②にも安全保障と重なる記述が含まれます。経済安全保障担当大臣を中心とした不断のサプライチェーン調査、デジタル大臣を中心としたサイバーセキュリティ対策・訓練の強化が挙げられており、防衛の枠外にも関連施策が置かれている構図が読み取れます。

防衛大臣会見で示された総理からの指示9項目

9月18日の閣議後記者会見で、小泉防衛大臣は「昨日は総理から指示書をいただきました」として、その内容を読み上げました。示された指示は次の9項目です。

指示内容
1 防衛力を抜本的に強化しつつ、防衛生産・技術基盤および自衛隊の人的基盤の強化に取り組み、戦略三文書の見直しに取り組む
2 日米同盟の抑止力・対処力を一層強化する
3 二国間・多国間の防衛協力・交流を推進し、「自由で開かれたインド太平洋」を深化させ、地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導する
4 日英イタリアでの次期戦闘機の共同開発を確実に推進する
5 在日米軍再編を進める中で抑止力の維持を図り、沖縄をはじめ地元の負担軽減を実現する
6 緊張感を持って警戒監視・情報収集を行い、事態に応じて法令に基づき適切に対処する
7 防衛省・自衛隊の信頼確保に全力を挙げ、任務の着実な遂行に万全を期し、また相次ぐ自然災害に対応し人命救助や被災者支援に取り組む
8 あらゆる機会を捉え、日本の製品・サービス・インフラの同志国への輸出を増やす交流を行う
9 平和安全法制に関する事務を担当する

小泉大臣は冒頭発言で、留任にあたり「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙する中、また年内の三文書改定に向けた重要なこの時期に、改めて防衛大臣に任ぜられたことを大変光栄に思う」と述べ、1年目以上の速度と強度で取組を推進しなければならないという危機感を示しました。改定までの残り時間については、あと2、3か月しかないとの認識も語られています。(参照:防衛大臣記者会見(令和8年9月18日) | 防衛省)

沖縄の基地負担軽減にも言及がありました。今年4月に喜舎場住宅地区の一部返還が合意され、会見前日の9月17日には新たにキャンプ瑞慶覧の一部土地の返還について日米で合意したことが報告されています。

また、記者の「核をめぐってもタブーなき議論を訴えたり、原子力潜水艦に関しても選択肢として排除しない考えを示している」との指摘に対しては、日本を取り巻く安全保障環境に楽観視できる要素は皆無だという認識を示したうえで、あらゆる選択肢を排除せず議論することの必要性を今後も丁寧に伝えていきたいと答えています。

2つの資料に共通する3つの重点

基本方針と会見に共通して現れる重点
  • 戦略三文書の年内改定
  • 防衛生産・技術基盤の強化と、民間資金の供給
  • インテリジェンス機能と経済安全保障の接続

第一に、戦略三文書の年内改定です。基本方針では防衛力の抜本的強化のための見直しとして、総理指示書では9項目の1番目として位置づけられ、残り時間の短さが会見でも繰り返し語られました。改定対象となる3つの文書がそれぞれ何を定めているかは、以下の記事で整理しています。

第二に、防衛生産・技術基盤の強化です。基本方針は③で「防衛生産基盤の強化をはじめとする」防衛力の抜本的強化とし、総理指示書も1番目に防衛生産・技術基盤と自衛隊の人的基盤の強化を挙げています。①の柱にある「危機管理投資」とも地続きのテーマです。

会見では民間金融の動きに関する質疑があり、小泉大臣は、防衛関連企業が事業を拡大・継続するには融資等を通じた金融機関の協力が欠かせないとの考えを示しました。

金融機関側の動きとして会見で挙げられたのは3つです。今年5月に日本政策投資銀行が、国際条約で禁止される非人道的兵器を除いて武器関連事業への投資制限を撤廃したこと。本年7月にプロドローン社が同行から資金調達したこと。同じく7月に全国銀行協会などと、防衛分野のスタートアップをめぐる金融面の課題について意見交換を行ったことです。

さらに、あるメガバンクが防衛関連企業への融資基準を作るという報道についても質問が出ました。小泉大臣は報道を前提とした受け止めとして、メガバンクが防衛分野への投資方針をより前向きに転換することになれば「防衛産業の成長に向けた非常に大きな一歩となります」と、条件を付けた形で述べています。

第三に、インテリジェンスと経済安全保障の接続です。基本方針は、国家情報会議を司令塔とする情報機能の強化と、インテリジェンスを活用した経済安全保障政策の推進をセットで記述しています。総理指示書でも6番目に、緊張感を持った警戒監視・情報収集と、事態に応じた法令に基づく適切な対処が挙げられました。情報機能の体制そのものが、産業や調達の話と地続きになっている点が特徴と言えるでしょう。

✎ AIS Insight

AISが注目したのは、防衛産業の資金供給という「お金の流れ」の話が、防衛大臣の定例会見で具体的な機関名・社名とともに語られた点です。ドローンやAI、センサーのように民生と防衛の双方で使える技術を持つ中小企業・スタートアップにとって、調達制度だけでなく資金調達の選択肢がどう変わるかは事業計画に直結します。政策文書を読むときに「どの産業の、どの段階にお金が流れる設計か」という視点を持つと、技術側からも動きを追いやすくなります。

関連トピックをもっと詳しく

基本方針・総理指示書に出てくる言葉は、それぞれ単独でも掘り下げがいのあるテーマです。関心のある切り口から読み進めてみてください。

防衛生産・技術基盤の強化を実務で支えるのが、契約ごとにバラバラだった情報保全の手続を事業者単位の1つの契約にまとめる新制度です。防衛分野の受注を検討する企業がまず確認すべき仕組みを解説しています。

では、なぜこれまで民間資金は防衛分野に向かいにくかったのか。金融機関や企業が抱える評判上の懸念という、会見の質疑の背景にある事情を整理しました。

三文書改定の議論が実際の予算にどう表れるかを知りたい方へ。令和9年度の概算要求から、何にいくら積まれたのかを読み解いています。

総理指示書の7番目にある自然災害対応は、2026年11月に設置が予定されている新しい司令塔組織が担うことになります。その役割と設置の経緯はこちらです。

まとめ

2026年9月17日の基本方針と、18日の防衛大臣会見を並べて読むと、戦略三文書の年内改定を軸に、防衛生産・技術基盤の強化、インテリジェンス機能、経済安全保障が並んで置かれている姿が見えてきます。会見ではこのほかにも、沖縄の基地負担軽減の進捗や、改定の議論をどう国民に説明していくかといった論点が語られました。基本方針の4本柱の1つに政策広報の充実が挙げられていることからも、改定に向けた説明や公表資料は今後増えていくことが見込まれます。

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AISブログ編集部

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